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晋平太 4thアルバム『DIS IS RESPECT』リリース記念 ロングインタビュー
(PART 3)

インタビュアー:大前 至(音楽ライター)


6. 世間知らず
 タイトルの通り、世間知らずなことをしているじゃないですか。ヒップホップって閉じた業界だし、世の中のことを全然分からないで、ヒップホップで食っていきたいって、まずありえない。けど、そのくらい馬鹿じゃないと出来ないし。でも、悩むじゃないですか。仕事をしなきゃいけないとか、結婚しなきゃいけないとか。これもストーリーというか、聞いてもらえば絵が分かるようにはなっていると思うんですけど、誰でもどれかのパターンは思い当たるんじゃないかな?って。けど、人生に正解は無いんで、答えを出すような曲ではないんですけど。

──ゲストのJ-REXXXはどのような経緯でオファーを?
 たまたま北海道にツアーか何かで行った時に、室蘭かどこかの凄く小さいハコのオーナーがJ-REXXXの「M.U.S.I.C」をかけてて。この曲、ヤバいなって思って。すぐに知り合いのレゲエやっている奴に連絡したら、知り合いだったんで紹介してもらって。その次の日くらいにはフックの仮歌(かりうた)が返ってきてら、凄く良くって。

──あと、プロデュースのBooKEYとはどういう人物でしょう?
 アルバムのトラックの募集をした時に送ってくれて。今回、募集のはこれしか使ってないんですけど、どこの人かも全然知らなくて、メールのやり取りしかしてない。けど、繰り返し聴いてて、なんかメロディがハマっちゃって。



7. ペーパートレイル feat R-指定(Creepy Nuts)  R-指定と何かやろうよって言ってて、トラックを松永君(Creepy NutsのDJ松永)にお願いして。トラックの選びとか、トピックとかも彼が決めてきて。「このトラックで自分を何かに例えてください」ってボンヤリとしたパスがきて。いろいろ考えてみたんですけど、なんか鉛筆の芯っていうのがハマるかもしれないって思って、1バースだけ書いたら、R-指定が素晴らしいフックを返してきたんで、これはイケるって。

──その鉛筆の擬人化っていうのが、聞いててビジュアルが浮かんできて、面白いなって。
 メタファー(隠喩)って日本では凄く少ないじゃないですか。直喩は多いけど、その次のステップに行きたかったっていうか。シングルで出した「にほんごであそぼう」をやってた時に、言葉について結構片っ端からいろいろ調べてて。その時に直喩と暗喩の違いとかくらいは何となく分かるようになってて。さらに今回、松永君に言われてようやく出来たっていう。


8. NJ~ナゾノジシン~ feat MR Q from RAPPAGARIYA&呂布カルマ
 北海道をツアー中にオーガナイザーとオーガナイザーの奥さんと飯を食った時に、「この人、NJだから」って言われて。「NJって何?!」って聞いたら、「謎の自信」って。それが超面白くって。これ絶対に曲のテーマとしてイケるだろうって思ったんだけども、誰も理解してくれなくて。けど、最近、トラップみたいなラップも市民権を得て、アホっぽい感じの曲も成立するじゃないですか。だから、この温めていたアイディアも今ならイケるかもって。皆、根拠の無い自信とか好きじゃないですか。それが俺もBボーイイズムだと思っていて。ライブとかバトルとかでも「俺はNJ持ってる。もはや謎じゃない自信がある」って言ってて。けど、それこそがそもそもNJなんだけども(笑)。そういう勘違いを推奨している曲です。

──MR Qと呂布カルマの二人をこのテーマでフィーチャーしたのは?
 Q君(MR Q)はもともとファンなんですけど。一緒に何かやりたいと思ってお願いしたら、狂ったバースが来たみたいな。Q君のいろんなエピソードを聞いていて、RHYMESTERの「リスペクト」に参加した経緯とかも聞いて吹っ飛んで(笑)。それでQ君にはこの曲でやって欲しいと思って。呂布カルマはダークヒーローというか、俺が持っていないものを完全に持ってて。よくよく考えたら、呂布カルマも半端ないNJなんですよ。あいつのラップは全部自信の表れだし、このバースも最高なんですけど。

──DJ YUTAKAのトラックもかなり凄いなと。
 何曲かもらっていたのを、シミ君とトラックを選んで、これヤバいねって。ユタカさんは俺にとってオヤジと呼べる存在で。あんな人、他にいないですよね。俺の中の知っている一番のNJがユタカさんですね。


9. NOMAN NOPERFECT feat SHINO
 完璧を求めてもしょうがないし、完璧になろうとする必要も全然なくて。けど、人間ってやっぱりどうしてもアラを探すというか。俺もそういう部分があるし。でも、なるべく加点法で世の中を見てたら、辛いことも減るだろうし、自分が楽しいんじゃないかなっていう。

──あと、曲の頭で東村山の駅のアナウンス音が入っているのは?
 今、住んでいるのが東村山で。東村山は30分くらいで都内に出れるし、けど、周りには自然があって、凄いバランスの良いところなんですよね。スタバも何にも無いですけど、逆に足りないものも無いかなって。

──フィーチャリングしているSHINO(The Grasshopper Set)も東村山在住?
 うちのマンションから歩いて3分くらいのところに住んでいて。シノ君(SHINO)は東村山に引っ越す前から知ってて、彼はいろんなことを教えてくれるし。彼みたいな情熱を持って、ヒップホップを長くやり続けている人って、日本でもそんなにいないと思うんですよね。シノ君の出している『COOLIN’』っていうアルバムが凄く良くて。家も近いし、一緒にやりましょうって。本当はこれにGOMESSSも入る予定だったんですけど、全然スケジュールが合わなくて。その、GOMESSのバージョンも追って出す予定です。

10. 初期衝動
 この曲は実体験のストーリーをギュッとまとめて。ヒップホップに出会って、仲間が出来て、結婚して、今もヒップホップやってますって、15年以上かけて俺の人生にあったことを濃縮してます。

──冒頭のリリックにある「俺とラップやんねえ?」って言ったのも実在の人物?
 そうです。もうラップは全然やってないですけど、そいつが日本語ラップを教えてくれて。小学生の頃からの地元の友達以外はほとんど、ラップが好きな晋平とか、ラッパーの晋平太として出会っている人ばっかりで。そのヒップホップを知って以降の話。今、十代のラッパーが増えているじゃないですか。それが凄く嬉しくて、ヒップホップがそいつらの人生の糧になって欲しいんですよね。いろんな挫折も味わうだろうし。でも、それをもう一回ポジティブに立て直せれば、その過去も変わるじゃないですか。過去は変えられないって言いますけど、俺は作った未来で過去は変わると思ってるんで。今の若い子を見ていて、自分の初期衝動を思い出すんですよね。そして、その子たちから俺はどう見えてるのかな?って。俺にとって、ZEEBRAとかYOU THE ROCKは憧れのスーパースターだし、神だったんですよ。彼らと同じとは言わないですけど、俺の言ったひと言で人生が左右される可能性も物凄くある。現に俺の影響でラップを始めましたって奴に、少なくとも100人以上は会ってるんですよ。だから、そういう責任があるなっていう。成功して、彼らに良い背中を見せたいですね。


11. 思えば遠くへ来たもんだ
 これは旅をした時の一日みたいな。ツアーで日本中回って、ある町に到着して、ハコに行ってリハーサルして、プラプラして、ライヴして、呑んで帰ってくるっていう、ただ、それだけなんですけど。それをいろんな町でやって、思えば遠くに来たもんだな~って思うんですよね。(地方から)東京に来ている人もそういう気持ちなんだろうし。人生で言っても、なんか、ヒップホップが好きっていうだけで、こんな突っ込んできちゃったら、半端じゃねえとこ来ちゃったなっていう感もあります。

──そういった旅の中で日本って国はどう感じる?
 日本は島国で小さいなって思う人もいるかもしれないけど、ヒップホップで旅をしてきて、本当に地方地方によって違うんですよね。俺はほぼ日本を一周していて、しかも、『UMB』のツアーとかで行く場合は、その町で泊まって、その町の奴らと触れ合って、それぞれ全然違うなって。日本もくまなく行くと半端じゃなくて、いろんな良いところも分かって。USのラップも大好きだけど、俺は日本に生まれ育って、日本語しか使えないし、俺にとっては日本語ラップって凄くデカいし。それを広められたら大きな意味があると思うんですよね。




12. 365×10
 CDを出したりするようになって10年っていうのと、あとは、嫁と出会って10年っていうのがあって。嫁は俺のラッパーとしてのキャリアはほぼ見てるんですけど。嫁に捧げる10年分のすみませんっていう、謝罪ですね。曲の最後のほうの声は嫁なんですけど。でも、10年間こうやって続けてこれたっていうのは感慨深いですね。10年続けられる人も少ないと思うんですけど、もし20年やったら、もうプロ中のプロじゃないですか。だから、20年は絶対やりたいっていう。想像しただけでゲボが出そうなんですけど。けど、死ぬまで絶対にヒップホップに携わると思うんで。辞めるとかは無いし、そういう気持ちでやってるんで。

──この曲のプロデューサーのMichitaはどのような人物?
 Michitaは北海道で出会った人で。北海道には毎年、『UMB』でも行くし。あと、『街おこし』ってイベントがあって、いろんな町に行って、MCバトルをやったり。そのツアーの間にMichitaとも出会って。彼のは北海道っぽいトラックっていうんですかね。凄いクセのある人ですけど、スケールのデカい綺麗な、雪の北海道のイメージで、好きなんですよね。




──アルバム全体の話に戻って、前作は『REVENGE』(=復讐)っていうタイトルからその当時の気持ちが出ているけど、今回はそういうのとはマインドが全然変わってきているのを感じますね。
 『REVENGE』の時は、「お前たちは間違っている」っていうのを世に伝えたくて。「俺はヤバい、ほれ見たか!」っていう気持ちでしかなかったですね。実際はそうじゃない曲もいっぱい入ってるんですけども、結果、全てのマインドを支えていたものが、ひと言で言えば“リベンジ”だったんで。けど、そのリベンジの仕方も間違ってたと思うし。ただ、『REVENGE』も思い入れがいっぱい詰まっているし、濃いと思うんで、聴いてはもらいたいですね。それを聴いて、『DIS IS RESPECT』を聴いてもらったら、またちょっと違うかなって。

──そういう意味では、先ほど言っていた「未来で過去は変わる」っていうのを、今回のアルバムで実践している感じですね。
 そうですね。また将来、また自分が何ごとも上手くいかないようなマインドになった時に、ヒップホップやらなきゃ良かったって思いたくないんですよね。嫌いになって終われないぜっていう、人生をかけたミッションがあると思うんですよね。今はまだ、その途中で、また“はじめの一歩”を踏み出して、「次どうしよかな?」っていう感じですね。でも、もうここからはあまりブレないような気がするんですよね。人間としての基礎がだいぶ出来てきたのかなって。もし出来てなくても、そういう気持ちでいたいなって。俺の持論なんですけど、こうしたいって思ったら、絶対そうなるんですよ。強く思ったら、それを上手くいかせる方法を考えることになるし。全ての魂を込めて歌えば、そういう風になると思うんですよね。ライヴの前にリハスタとかに入って、「CHECK YOUR MIC」のサビとかを熱唱するわけですよ。「今日勝つ為に生まれてきた」って。そうやって、自分を上げて、さらにそれを見て上がってくれる人がいれば良いなって。





2016年2月6日発売!!
晋平太 4thアルバム『DIS IS RESPECT』






i Tunesよりダウンロードもできます!!
晋平太 4thアルバム『DIS IS RESPECT』







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